祭り · 12月

春日若宮おん祭

真夜中、明かりをすべて消した参道を神様が進み、昼には平安から江戸時代の装束の約1000人が奈良の町を練り歩く。1136年に始まった、奈良の師走の大祭です。

Salted salmon and pheasants hung as offerings for the Kasuga Wakamiya On-matsuri in Nara
Photo: Falcated, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
開催地

奈良県

  • 奈良県奈良市の春日大社・若宮神社と参道の御旅所。お渡り式は奈良県庁前から三条通りなど市街地を通る

最近の開催

年日程来場者数備考
202612月15日〜18日(お渡り式は17日)—891回目。中心行事は毎年12月15日〜18日に決まっています。
202512月15日〜18日(お渡り式は17日)—890回目。雨の予報が出ていましたが、お渡り式は一部の短縮のみで約1000人が練り歩きました。御旅所祭の途中から雨が降り、芝舞台に仮屋根を設けて奉納が続けられました。
202412月15日〜18日(お渡り式は17日)—889回目。晴天のもと、約1000人がお渡り式に参加しました。
202312月15日〜18日(お渡り式は17日)—888回目。新型コロナと雨で4回続けて縮小されていたお渡り式が、5年ぶりに通常規模(約1000人)で行われました。
202212月15日〜18日(お渡り式は17日)—887回目。3年ぶりの通常規模を予定していましたが、雨のためお渡り式は約20人、参道約300メートルに縮小されました(2020年・2021年は新型コロナ対策で縮小)。

どんな祭り? いつ開かれる?

春日若宮おん祭(かすがわかみやおんまつり)は、奈良市の春日大社の摂社(本社に付属する神社)である若宮神社の祭りです。「おん祭」は「御祭」、つまり特別な祭りという意味の呼び名です。準備の儀式は7月から始まりますが、中心となる行事は毎年12月15日から18日に行われ、なかでも12月17日が祭りの本番です。2026年も12月15日〜18日、本番の17日は木曜日にあたります。

17日は、若宮の神様を真夜中に本殿から「御旅所(おたびしょ)」と呼ばれる仮の御殿へ移し、昼は芸能集団などの行列がその神様のもとへ参り、午後から夜まで古い芸能を奉納し、日付が変わる前に神様を本殿へ戻す、という1日がかりの流れです。行列と芸能は国の重要無形民俗文化財に指定されています。

飢饉と疫病の時代に始まった祭り

主催者によると、平安時代の1130年代、長雨と洪水で飢饉が続き、疫病が広がりました。上皇や関白・藤原忠通らが若宮の神様の加護を願って1135年に今の場所に社殿を建て、翌1136年に神霊を春日野に迎えて盛大な祭りを行ったのが始まりとされます。その後、長雨と洪水が収まったと伝えられ、以来、五穀豊穣と人々の安らぎを祈って、大和国(現在の奈良県)を挙げて行われてきました。

日付は時代とともに変わり、明治時代から新暦の12月17日に定まりました。主催者は「一度も途切れることなく続いてきた」としており、2025年で890回目を数えました。春日大社と縁の深い興福寺の僧たちが長く祭りを取り仕切り、明治以降は春日大社の主催となっています。

真夜中の「遷幸の儀」

17日の午前0時、若宮の神様を本殿から御旅所へ移す「遷幸(せんこう)の儀」が行われます。参道の明かりはすべて消され、写真撮影はもちろん、懐中電灯をつけることも許されません。2本の大きな松明(たいまつ)と香で道を清め、神職たちが榊(さかき)の枝で神様を何重にも囲み、「ヲー、ヲー」と声を上げ続けながら、雅楽の調べとともに暗闇の中を進みます。

一般の人も参道の脇で見守ることができますが、報道によると主催者は「見物でも観光でもなく、参列です」と呼びかけています。静かに、明かりを使わずに迎えるのがこの神事の決まりです。神様が本殿へ帰る「還幸(かんこう)の儀」も17日の午後11時ごろ、同じように暗闇の中で行われます。

昼の「お渡り式」と夜まで続く芸能

17日の正午、奈良県庁前から時代行列「お渡り式」が出発します。参加者は約1000人、馬は約50頭。近鉄奈良駅前、JR奈良駅前を通り、三条通りを東へ上って春日大社の参道へ向かいます。馬に乗り、鶴の飾りのついた傘を差しかけられた「日使(ひのつかい)」、巫女、能の古い呼び名である「猿楽(さるがく)」や「田楽(でんがく)」の芸能集団、流鏑馬(やぶさめ)の子どもの射手、そして江戸時代の大名行列など、12の組が平安から江戸時代までの装束で続きます。

春日大社の一の鳥居を入ってすぐの「影向(ようごう)の松」の前では、行列の芸能集団がそれぞれ芸の一節を演じる「松の下式(まつのしたしき)」が行われます。この松は、能舞台の奥の板に描かれる松の由来といわれています。

午後2時半ごろからは御旅所の芝舞台で「御旅所祭」が始まり、午後10時半ごろまで、巫女の神楽、子どもが舞う東遊(あずまあそび)、田楽、顔を白い布で隠して舞う細男(せいのお)、能の翁を略式にした神楽式、大和の舞である和舞(やまとまい)、そして中国大陸や朝鮮半島から伝わった舞楽が次々に奉納されます。日本の芸能の歴史を一日で見るような時間です。18日には奉納相撲や能・狂言(後宴能)も行われます。

見物のポイントと注意

お渡り式は市街地の通りから無料で見られます。ゆっくり座って見たい人のために、奈良市観光協会が出発地点(登大路園地)、影向の松の前、御旅所前の3か所に有料の特別桟敷席を設けており、近年は10月中旬に予約が始まっています。

17日は行列の通る道で交通規制があります。雨の日はお渡り式の規模が大きく縮小されることがあり、2022年は雨のため行列が約20人、参道約300メートルだけに短縮されました。15日には、奈良市中心部の商店街にある「大宿所(おおしゅくしょ)」で、行列で使う装束や道具、供え物として吊るされた鮭や雉(きじ)が並び、祭りの名物「のっぺ汁」がふるまわれます。

ヒント

  • 真夜中の遷幸の儀・還幸の儀では、写真撮影も懐中電灯やスマートフォンの明かりも禁止です。12月の深夜は冷え込むので、防寒着を用意しましょう。
  • お渡り式を見るなら、松の下式が行われる春日大社一の鳥居付近か、三条通り沿いがわかりやすい場所です。座って見たいなら奈良市観光協会の特別桟敷席を確認しましょう。
  • 御旅所祭の芸能は夜まで続きます。暗くなってからの東遊や舞楽は、篝火(かがりび)の明かりの中で見られます。
  • 雨の予報の日は行列が縮小されることがあります。当日の情報を主催者や報道で確認してから出かけましょう。
  • 15日の大宿所では、のっぺ汁や供え物の鮭・雉など、ほかではあまり見られない祭りの準備の様子に触れられます。

出典

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