Why Japan? · 暮らし

なぜ日本の道にはほとんど名前がないの?

日本の住所は「通り」ではなく「区画」に番号を振る仕組み。道は住所の主役ではなく、区画の境界線にすぎないのです。

Illustration of narrow lanes between houses in a Japanese neighborhood, with a traveler checking a map at a corner
AI-generated illustration

ざっくり言うと

日本のほとんどの地域では、住所を「通りの名前+番地」ではなく、「町の名前+区画(ブロック)の番号+建物の番号」で表します。道路は住所の単位ではなく、区画と区画を分ける線という扱いなので、細い道に名前を付ける必要がそもそもなかったのです。

ただし、道に名前がまったくないわけではありません。大きな通りには自治体が決めた愛称が付いていることが多く、京都や札幌のように、通りや碁盤の目を使った独特の住所の地域もあります。

もともとは土地の番号だった

日本の住所の出発点は地番(ちばん)です。地番は土地の登記(所有者などを公的に記録すること)のために一筆ごとの土地に付けた番号で、道を歩いて家を探すための仕組みではありませんでした。

そのため、町の境界が実際の道路と一致しなかったり、番号が規則正しく並んでいなかったりして、住所から場所を探すのがとても難しくなっていました。都市が大きくなるにつれて、郵便の配達や人を訪ねるときの不便が問題になっていきます。

そこで1962年に「住居表示に関する法律」が作られ、建物の場所を分かりやすく示すための新しいルールとして住居表示(じゅうきょひょうじ)が導入されました。今でも土地の登記には地番が使われていて、住居表示は建物の住所だけに使われます。住居表示がまだ実施されていない地域では、地番がそのまま住所として使われています。

今の住所はこう読む

住居表示には街区方式(がいくほうしき)と道路方式(どうろほうしき)の二つがありますが、全国で標準的に使われているのは街区方式です。道路や線路、川などで囲まれた一つの区画を街区(がいく)と呼び、これに番号(街区符号)を付けます。

次に、その街区のまわりに一定の間隔(10〜15メートルほど)で基礎となる番号を時計回りに振っていき、建物の玄関がどの番号の位置に面しているかで、その建物の住居番号が決まります。例えば東京都世田谷区の説明では、街区の角の一つを起点に約15メートルごとに番号を振るとしています。起点の決め方は自治体によって違います。

つまり「〇〇町2丁目3番4号」なら、「〇〇町」という町の「2丁目」エリアにある「3番」の街区の、「4号」の位置に玄関がある建物、という意味です。英語の住所表記では「2-3-4」のようにハイフンでつなげて書かれることもよくあります。

一方の道路方式は、欧米のように道路の名前と建物の番号で住所を表す方法です。日本ではごく少数派で、山形県東根市と北海道浦河町の一部でしか採用されていません。

京都と札幌は例外

京都の中心部では、住所に通りの名前がそのまま入ります。例えば同志社女子大学が紹介している自校の住所は「京都市上京区今出川通寺町西入る玄武町」で、「今出川通と寺町通の交差点から西へ入ったところ」という意味です。北へ行くことを上ル(あがる)、南へ行くことを下ル(さがる)、東西は東入ル・西入ルと表します。碁盤の目のように通りが走る古都ならではの道案内が、住所として生き残っているのです。

京都市には、住居表示が実施された地区がありません。通り名を使った住所がそれだけ深く根付いているということです。なぜ北へ行くことを「上がる」と言うのかについては、京都の町が南から北へ向かってゆるやかに高くなっていることが一つの説明として紹介されています。同志社女子大学のコラムによると、京都駅近くの東寺(標高約23メートル)から北の北大路堀川(約77メートル)までの高低差はおよそ54メートルで、東寺の五重塔(約55メートル)とほぼ同じ高さになるそうです。

札幌では条丁目(じょうちょうめ)という碁盤の目の仕組みが使われていて、「北8条西5丁目」のように、基準となる通りから北へ何本目、西へ何本目かで場所を表します。どちらの都市も、通りや区画がまっすぐ整然と並んでいるからこそ成り立つ方法です。札幌でも街区ごとの番号は付けられておらず、碁盤の目そのものが住所の役割を果たしています。

実は名前のある道もある

住所には使われなくても、大きな道路には通称道路名(つうしょうどうろめい)という愛称が付けられています。東京都は1962〜63年、1984年、2014年に主要な道路へ通称名を付けており、青山通り、山手通り、環八通り(環状八号線)などがその例です。目的は、住民や観光客が移動しやすくすることと、災害時の避難や緊急輸送をスムーズにすることだとされています。

通称名は時代とともに変わることもあります。東京・虎ノ門の新しい道路は、戦後の計画にちなんで「マッカーサー道路」と呼ばれてきましたが、2013年に「新虎通り」という通称名が付けられました。

区や市が独自に愛称を付けることもあります。東京都台東区では1988年度から道路愛称の制度を始め、浅草の雷門通りのような、昔から地元で親しまれてきた名前を正式な愛称として残しています。2009年からは、もっと細い路地にも愛称を認める制度を加え、2026年2月の時点で道路愛称名が20、細い道の愛称が57認定されています。ただし、こうした名前は道案内の看板や会話で使われるもので、郵便の住所には基本的に登場しません。

外国人が戸惑うポイントと、迷わないコツ

よく驚かれるのは、住所の番号が道に沿って順番に並ばないことです。番号は街区ごとに振られるため、道の反対側はまったく別の街区で、隣の建物なのに番号が大きく飛ぶこともあります。同じ位置に玄関がある建物は同じ住居番号になるので、マンションなどでは建物名や部屋番号まで書かないと届かないこともあります。

現実的には、住所を丸ごと地図アプリに入力するのが一番確実です。町の中では、建物の入り口などに住居番号の表示板が付けられていることが多く、近くに来たらそれを頼りに探せます。日本人同士でも初めての場所では地図アプリを見ながら探すのが普通なので、迷っても気にする必要はありません。

住所をきちんと伝えられるようにしておくことは、非常時にも役立ちます。住居表示はもともと、郵便の配達だけでなく、救急や消防がすばやく現場にたどり着けるようにすることも目的の一つでした。日本に住み始めたら、自宅の住所を「〇丁目〇番〇号」まで日本語で言えるように、スマートフォンのメモなどに控えておくと安心です。

ヒント

  • 住所は「丁目・番・号」まで省略せずに地図アプリへ入力しましょう。建物名や部屋番号も忘れずに。
  • 「2-3-4」のような数字は「2丁目3番4号」の略。道路沿いの番号ではなく区画の番号です。
  • 目的地の近くでは、建物の入り口にある住居番号の表示板をチェックすると探しやすくなります。
  • 京都の住所の「上ル」は北へ、「下ル」は南へ、「西入ル」「東入ル」は交差点から西・東へ入るという意味です。
  • 道順を聞くときは、通りの名前よりも駅や大きな交差点、目立つ建物を目印にすると話が通じやすいです。

出典

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