祭り · 12月

秩父夜祭

重さ20トンにもなる山車が、冬の花火の下で急な坂を駆け上がる。埼玉・秩父で毎年12月2日と3日に開かれる、ユネスコ無形文化遺産の祭りです。

Fireworks burst over a row of lantern-lit festival floats at night during the Chichibu Night Festival
Photo: ちちびあん, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
開催地

埼玉県

  • 埼玉県秩父市の秩父神社と市街地。3日夜は団子坂を上った先の御旅所がクライマックス

最近の開催

年日程来場者数備考
202612月2日〜3日—日付は毎年12月2日(宵宮)・3日(大祭)に固定されています。
202512月2日〜3日約24万8千人(2日間)秩父市誕生20周年の記念花火大会として開催。夜も比較的暖かく、6基すべてが団子坂を上りました。中町屋台が6年ぶりに屋台芝居の当番を務めました。
202412月2日〜3日約25万7千人(2日間)外国人観光客の姿が例年以上に多く見られたと報じられました。
202312月2日〜3日約36万8千人(2日間)コロナ禍の後で初めて土曜・日曜と重なり、前年を8万人以上上回りました。下郷笠鉾が車輪付近のトラブルで団子坂を上れませんでした。
202212月2日〜3日約28万4千人(2日間)新型コロナで2020年・2021年は屋台行事が中止となり、笠鉾・屋台が3年ぶりに街なかを曳かれました。

いつ、どこで開かれる?

秩父夜祭(ちちぶよまつり)は、埼玉県秩父市にある秩父神社の例大祭(年に一度の最も大切な祭り)です。曜日に関係なく、毎年12月2日が宵宮(よいみや、前夜祭にあたる日)、12月3日が大祭(本祭)と日付が決まっています。2026年は12月2日(水)と3日(木)です。

京都の祇園祭、岐阜県の飛騨高山祭とともに「日本三大曳山祭(ひきやままつり、山車を曳く祭り)」の一つに数えられます。笠鉾・屋台の行事と秩父神社の神楽は国の重要無形民俗文化財で、2016年には全国33件の「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されました。

地元では「冬まつり」「夜まつり」とも呼ばれ、秩父神社によると、周辺の村では「妙見(みょうけん)まち」、養蚕農家の間では「お蚕(かいこ)まつり」とも呼ばれてきました。

絹の市とともに育った祭り

江戸時代中期、秩父神社の周りに「絹大市(きぬのたかまち)」と呼ばれる絹織物の市が立つようになり、その経済的な繁栄とともに祭りも盛大になりました。山車の行事の始まりは寛文年間(1661〜73年)とも享保年間(1716〜36年)とも伝わっています。今は絹市こそ立ちませんが、祭りに合わせて神社近くの通りで「秩父絹市」が開かれ、伝統の織物「秩父銘仙(めいせん)」などが売られています。

祭りには地元に伝わる話があります。秩父神社にまつられる妙見様(女神)と、町の南にそびえる武甲山(ぶこうさん)の男神が、年に一度この夜だけ会うことを許される、というものです。武甲山の神の正妻は近くの諏訪神社の「お諏訪様」とされ、3日の夜、山車が諏訪神社の近くを通るときにはお囃子をやめて静かに進む習わしがあります。秩父まつり会館はこれを「冬版七夕伝説」とも紹介していますが、あくまで言い伝えです。

6基の笠鉾・屋台と見どころ

祭りの主役は、2基の笠鉾(かさぼこ)と4基の屋台の計6基の山車です。笠鉾は中近(なかちか)と下郷(したごう)、屋台は宮地(みやじ)・上町(かみまち)・中町(なかまち)・本町(もとまち)。豪華な彫刻や刺繍の幕で飾られ、「動く陽明門」とも呼ばれます。重さは12〜20トンほどあり、1基を150〜200人の曳き手が引きます。山車の中では太鼓・笛・鉦(かね)による「秩父屋台囃子(やたいばやし)」が絶えず演奏されています。

山車の前に乗る紅白の襦袢(じゅばん、着物の下着)姿の人は「囃子手(はやして)」と呼ばれ、町内で一生に一度だけ選ばれる祭りの花形です。「ホーリャイ」という掛け声で曳き手を励まします。秩父市によると、正しくは「ホーライ」で、仙人が住むという伝説の山「蓬莱山(ほうらいさん)」に由来するといわれます。

屋台の両側に舞台を張り出して上演する「屋台芝居(屋台歌舞伎)」と、子どもが長唄に合わせて日本舞踊を踊る「曳き踊り」も見どころです。屋台芝居は4つの町が毎年交代で受け持ちます。交差点では、太い棒を使って山車を一点で浮かせて向きを変える「ギリ廻し」が見られます。

クライマックスは3日夜の団子坂

3日の夜、神輿(みこし)や御神馬(ごしんめ、神の馬)の御神幸(ごしんこう)行列が秩父神社を出発し、6基の山車がその後に続いて御旅所(おたびしょ、神様が一時とどまる場所)へ向かいます。最後の難所が「団子坂(だんござか)」と呼ばれる急な坂で、傾斜は約25度。重い山車が掛け声とともに一気に坂を駆け上がる場面が祭りの頂点です。途中で秩父鉄道の踏切を渡るため、架線を作業員が手作業で外して山車を通します。

同じ時間帯に、芝桜で知られる羊山公園から花火が打ち上げられます。冬の澄んだ空気のなかで上がる花火は秩父の人々の自慢で、2025年は3日だけで約4,100発が上がりました。6基の山車が御旅所にそろうのは22時ごろで、その後も曳き踊りの奉納が続き、山車は深夜に各町へ帰っていきます。

混雑と見物のルール

近年は2日間で25〜37万人ほどが訪れ、特に3日の夜は大変混雑します。秩父市によると、団子坂の周りは非常に狭く有料観覧席も設けられるため、観覧席の予約がない人が曳き上げを見るのはほとんど無理だそうです。夜の山車は秩父神社、秩父鉄道秩父駅前、本町・中町通りなどで見られ、花火だけなら西武秩父駅前、秩父駅前、国道140号沿いなどがすすめられています。

2日の宵宮は4基の屋台が中心で、3日より見物しやすく、山車どうしがすれ違う場面や曳き踊りを間近で見られます。祭り会場はすべてドローンの飛行・撮影が禁止で、花火会場で飛ばすと打ち上げが中止になると観光協会が呼びかけています。市の中心部では大規模な交通規制があり、道路の大渋滞が予想されるため、電車での来場が強くすすめられています。

ヒント

  • ゆっくり見たいなら12月2日の宵宮がおすすめです。山車のすれ違いや曳き踊りを近くで見られ、日中は山車の綱を曳かせてもらえることもあります。
  • 団子坂の曳き上げを見たい場合は、秩父観光協会が運営する御旅所の有料観覧席(桟敷席)を早めに確認しましょう。
  • 車ではなく電車で。最寄り駅は西武鉄道の西武秩父駅、秩父鉄道の秩父駅・御花畑駅で、3日は深夜まで臨時列車が出ます。
  • 12月の秩父の夜は冷え込みます。夜遅くまで外にいることになるので、防寒具をしっかり用意しましょう。
  • 祭り当日以外でも、秩父神社前の秩父まつり会館で笠鉾・屋台や関連資料を見ることができます。

出典