Why Japan? · 季節

なぜ日本ではクリスマスにケンタッキーを食べるの?

きっかけは1974年に始まった広告キャンペーン。決まった過ごし方のなかった日本のクリスマスに、フライドチキンがぴたりとはまりました。

Illustration of a family gathering around fried chicken and a strawberry Christmas cake on Christmas Eve in Japan
AI-generated illustration

ざっくり言うと

日本でクリスマスにケンタッキー・フライド・チキン(KFC)を食べる習慣は、1974年に日本KFCが全国で始めた「クリスマスにはケンタッキー」というキャンペーンから広まりました。

当時の日本には、クリスマスに家族で何を食べるかという決まった伝統がありませんでした。七面鳥はなじみがなく、家庭のオーブンも小さかったため、買ってくるだけでごちそうになるフライドチキンのセットが、ちょうどよい「クリスマスの食卓」になったのです。今では、クリスマスの時期に推計360万世帯がKFCのチキンを買うといわれるほど、日本の冬の風物詩(季節を感じさせる恒例の光景)になっています。

日本のクリスマスは宗教行事ではない

まず知っておきたいのは、日本のクリスマスがほとんど宗教と関係のない行事だということです。キリスト教徒は人口の1%ほどしかおらず、12月25日も祝日ではありません。多くの人にとってのクリスマスは、サンタクロースやプレゼント、イルミネーション(電飾)を楽しむ季節のイベントです。

過ごし方もさまざまで、クリスマスイブ(12月24日)を恋人と過ごす日と考える人もいれば、家族でごちそうとケーキを囲む家庭もあり、特に何もしない人もいます。こうした「決まった形がない」状態が、新しい習慣が入り込む余地になりました。

1970年、日本にKFCがやってきた

日本KFCは1970年7月、米国のKFCと三菱商事の合弁会社として設立されました。同じ年に大阪で開かれた日本万国博覧会(大阪万博)で試験的に出店し、11月には名古屋市に1号店を開いています。

このころの日本は戦後の経済成長で豊かになり、人々は西洋の文化や食べ物を積極的に取り入れ始めていました。フライドチキンも、そうした新しい洋風の味の一つとして受け入れられていきます。店舗は毎年30店ほどのペースで増え、1981年には324店に達しています。

始まりの物語には諸説ある

クリスマスとチキンが結びついたきっかけについては、いくつかの話が伝えられています。BBCの取材に対し日本KFCの広報担当者が語ったところでは、1号店の店長だった大河原毅(おおかわら・たけし)さんが、店に来た外国人客が「クリスマスに七面鳥が食べられなくて寂しい」と話しているのを耳にし、チキンで代わりにできないかと考えたのが始まりだといいます。

別の説明では、東京・青山のミッション系の学校から、クリスマス会用のチキンとサンタクロース役を頼まれたことがきっかけだったとされます。さらに、テレビの取材で「アメリカでもクリスマスにチキンを食べるのか」と聞かれた大河原さんがそうだと答え、後にそれが事実ではなかったと認めた、という話もあります。CNNは、会社の公式説明を含め複数の説があると紹介しており、どれが本当の始まりかははっきりしません。

確かなのは、1974年に「クリスマスにはケンタッキー」というキャンペーンが全国で始まり、これが大きな成功を収めたことです。大河原さんはその後、1984年から2002年まで日本KFCの社長を務めました。1980年代半ばからは、店頭のカーネル・サンダース像にサンタクロースの衣装を着せる演出も定番になっています。日本では年長者を敬う気持ちが強く、赤いサンタ服を着た白髪のカーネルおじさんは、すぐにクリスマスの顔になったとBBCは伝えています。

このキャンペーンを研究したフランスのビジネススクールのマーケティング研究者ヨーナス・ロッカ氏は、BBCに対し「空白を埋めたのです」と語っています。日本にはクリスマスの過ごし方の伝統がなかったところに、KFCが「クリスマスにはこうしましょう」という形を示した、という分析です。

今のクリスマスのケンタッキー

今ではクリスマスイブが日本KFCにとって一年でいちばん忙しい日です。BBCによれば、クリスマスシーズンにKFCのチキンを買う家庭はおよそ360万世帯と推計され、この時期の店舗の売上は普段の10倍に達することもあります。AFPの報道では、予約受付は例年11月上旬ごろから始まります。AFPによると、2020年のクリスマスには来店客数が普段の10倍を超えた日もあったそうです。

看板商品は「パーティバーレル」と呼ばれるバケツ型の容器に入ったセットで、チキンやサラダ、デザートなどがまとめて入っています。BBCが伝えた2016年の例では、チキンのボックスが3,780円から、丸ごとのローストチキンなどが付いた「プレミアム」なセットが5,800円と、家族のごちそうらしい価格帯でした。テレビCMでは竹内まりやさんの「すてきなホリデイ」がクリスマスCMの定番曲として長く使われています。2023年のCMでは、昭和・平成・令和の三つの時代を通してお客さんと一緒にクリスマスを祝ってきたKFCの姿が描かれ、長く続く家族の習慣であることが前面に出されていました。

ケーキはケーキ屋さんで買い、チキンはKFCで、という家庭もあります。BBCの取材に答えた東京の男性は、大事なのはチキンそのものより家族が集まることだと話していました。

外国人が驚くポイントと、体験するコツ

KFCの本国アメリカでは、クリスマスにフライドチキンを食べる習慣はありません。BBCの取材に答えた米国のシェフは、クリスマスのディナーにフライドチキンのバケツを持ってきたら正直怒るだろう、と話しています。手作りのごちそうが中心の国から見ると、それだけ意外な光景なのです。そのため、12月の日本で店の前に行列ができているのを見て驚く旅行者はたくさんいます。これは企業の宣伝が季節の習慣として根付いた珍しい例として、海外の研究者にも注目されています。

ちなみに、日本のカーネル・サンダース像にはもう一つ有名な話があります。1985年に阪神タイガースが優勝したとき、喜んだファンが大阪・道頓堀の店の前にあったカーネル像を川に投げ込み、その後チームがなかなか優勝できないのは「カーネルの呪い」だという都市伝説が生まれました。

実際に体験してみたいなら、早めの予約が確実です。予約をせずに12月24日や25日に店へ行くと、長い列に何時間も並ぶことがあります。混雑を避けたいなら、クリスマス当日を避けて前後の日にずらすのも手です。日本のクリスマスらしい雰囲気は、イルミネーションやクリスマスケーキと合わせて楽しむとより伝わってきます。

ヒント

  • クリスマスのKFCを食べたいなら、11月ごろから始まる予約を利用しましょう。
  • 12月24日・25日は予約なしだと長時間並ぶことがあります。日をずらすのも一つの方法です。
  • 日本のクリスマスは宗教行事ではなく季節のイベント。教会に行かなくても気軽に楽しめます。
  • 12月25日は祝日ではないので、会社や学校、お店は基本的に通常どおり動いています。
  • チキンと一緒に、クリスマスケーキも試してみると雰囲気が味わえます。

出典

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