祭り · 1月

若草山焼き

奈良公園の芝生の山、若草山の斜面全体に火を放ち、冬の夜空を焦がす。古墳の霊を鎮めたという言い伝えを持つ、奈良に早春を告げる炎の行事です。

Fireworks burst above Mount Wakakusa as its grassy slopes burn at night, seen behind the red Suzakumon Gate in Nara
Photo: 名古屋太郎 (新しいタブで開きます), CC BY-SA 4.0 (新しいタブで開きます), via Wikimedia Commons
開催地

奈良県

  • 奈良県奈良市の奈良公園・若草山。御神火は春日大社境内の飛火野から山麓の野上神社へ運ばれる

最近の開催

年日程来場者数備考
20271月23日(予定)—毎年1月第4土曜日の開催という県の規定による日付です。
20261月24日—雑踏事故の防止のため、山麓ゲート内などに初めて有料観覧エリアが設けられました。約600発の花火のあと、午後6時半ごろに点火されました。
20251月25日推計約19万人観覧者は過去最高と報じられ、山麓ゲート内には約1万人が集まりました。これが翌年からの一部有料化につながりました。
20241月27日—天候に恵まれ、前年と違って山全体がよく燃えました。
20231月28日約17万人新型コロナによる観覧制限が解け、3年ぶりの通常開催。ただし直前の雪の影響で火が燃え広がらず、燃えたのは全体の1割ほどでした。

いつ、どこで開かれる?

若草山焼き(わかくさやまやき)は、奈良市の奈良公園にある若草山で、毎年1月の第4土曜日に行われる行事です。主催は奈良県などでつくる若草山焼き行事実行委員会。夕方に花火が打ち上げられたあと、山の草地に一斉に火がつけられ、炎が斜面を駆け上がります。

若草山は標高342メートル、広さ33ヘクタール。芝生に覆われたなだらかな丸い丘が3つ重なった形の山で、ふだんは鹿の姿もよく見られます。東大寺や春日大社、春日山原始林といった世界遺産に囲まれているため、火が燃え移らないよう細心の注意を払って行われます。

幽霊の言い伝えから始まった山焼き

若草山の頂上には、鶯塚(うぐいすづか)古墳という大きな前方後円墳(鍵穴の形をした古代の墓)があります。奈良県によると、昔は「この墓から幽霊が出るが、山を焼けば出なくなる」「年が明けるまでに山を焼かないと悪いことが起こる」といった迷信があり、山を通る人が勝手に火をつけるようになったといわれています。

火が東大寺の境内に迫ることもたびたびあり、1738年には奈良奉行所が放火を禁じる立て札を立てました。それでも放火は止まず、江戸時代の終わりごろには東大寺・興福寺と奉行所が立ち会って山を焼くようになりました。県はこうした成り立ちから、山焼きはもともと古墳に眠る霊を鎮める祭礼であり、供養でもあったと説明しています。

今の形になったのは1900年(明治33年)で、それまで昼に行われていたものが夜の行事になりました。開催日は2月11日、1月15日(成人の日)、成人の日の前日の日曜日と移り変わり、2009年から1月の第4土曜日になりました。現在は春日大社・興福寺・東大寺の神と仏がともに、先人の霊を慰め、奈良の防火と世界の平和を祈る行事とされています。

当日の流れ:御神火、花火、一斉点火

当日の午後、春日大社の境内の飛火野(とびひの)では「春日の大とんど」が行われ、正月に納められた古いお札やしめ縄飾りがたき上げられます。夕方、この大とんどの火を「御神火(ごしんか、神聖な火)」としてもらい受ける祭典があり、法螺貝(ほらがい)を吹く山伏を先頭に、春日大社・興福寺・東大寺の関係者や奈良奉行所の役人に扮した人など約40人の「聖火行列」が、若草山のふもとの野上(のがみ)神社まで火を運びます。

野上神社で山焼きの無事を祈る祭典が行われたあと、18時15分ごろから大花火が始まります。県内では珍しい大玉の「尺玉」も上がり、近年は約600発が打ち上げられています。

花火が終わると18時30分ごろ、奈良市消防団の団員約300人が、ふもとの大かがり火から松明(たいまつ)に火を移して山の正面に運び、法螺貝とラッパの合図で、周囲3,800メートルの草地に一斉に火をつけます。天候にもよりますが、火は一気に燃え広がり、30分から1時間ほどで燃え尽きます。

炎を支える裏方の仕事

火が山の外へ広がらないよう、事前に点火場所の周りのススキを刈り取り、一定の幅の防火帯をつくります。聖火行列や大かがり火に使う松明は、すべて奈良公園事務所の職員による手作りです。材料は「ジン」と呼ばれる、油分を多く含んだ松の根の部分で、奈良公園の倒木などから採ったものを何年も寝かせ、乾かしてから使います。毎年、秋から冬にかけて1,000本ほどを加工しているそうです。

混雑・天候と見物の注意

コロナ禍のあと見物客が増え、2025年は推計約19万人が訪れたと報じられました。斜面のすぐ下の山麓ゲート内には約1万人が詰めかけたため、雑踏事故を防ぐ目的で、2026年から山麓ゲート内と奈良公園バスターミナル屋上が前売り券制の有料観覧エリアになりました。チケット収入は警備など安全対策に充てられます。

専用の駐車場はなく、当日は15時ごろから20時ごろまで奈良公園周辺で交通規制があります。若草山へ上る新若草山ドライブウェイや遊歩道も昼から通れなくなります。荒天の場合は中止の可能性があり、中止になっても延期はありません。少しの雨なら実施しますが、草が湿っていると火がつかないこともあります。

ヒント

  • 車ではなく電車とバス、徒歩で。奈良公園周辺は夕方に全面的な交通規制がかかり、観光バスやタクシーも通れなくなる時間帯があります。
  • 斜面の真下で見たい場合は、有料観覧エリアの前売り券が必要です(2026年の回は前年の11月中旬に発売されました)。山全体が燃えるので、ふもとから離れた場所からでも炎は見えます。
  • 午後のうちに飛火野の「春日の大とんど」や聖火行列も見ておくと、行事の流れがよくわかります。
  • 1月の夜の屋外で長く待つことになります。防寒具をしっかり用意しましょう。
  • 雨や雪のあとは燃え方が弱くなることがあります。当日の実施状況は奈良県の公式情報で確認しましょう。

出典

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