天ぷら
江戸の屋台で串に刺して売られていた揚げ物が、いまは専門店のカウンターで味わう料理に。長崎には、つゆのいらない甘い衣の天ぷらもあります。
全国で食べられている料理
本場として知られるのは 東京都・長崎県。
天ぷらとはどんな料理?
天ぷらは、魚介や野菜に小麦粉を薄くまぶし、卵と小麦粉を水で溶いた衣にくぐらせて、植物油で揚げる料理です。東京で昔から好まれてきた具は、エビ、キス、イカ、アナゴ、メゴチ(小さな白身魚)、ホタテ、若いアユなどです。
農林水産省によると、江戸(今の東京)の天ぷらは、江戸前(東京湾)の新鮮な魚介をごま油で揚げ、揚げたてを次々に食べるのが特色です。一方、かつての上方(京都・大阪)では、魚のすり身を揚げたものを「てんぷら」と呼んでいました。
南蛮料理から江戸の屋台、そして高級料理へ
天ぷらの原点は、16世紀中ごろにポルトガルから伝わったフリッター(衣揚げ)のような南蛮料理だと伝えられています。ただ、当時は料理にたくさんの油を使うことが少なく、広まったのは江戸時代に菜種油の生産が増えてからといわれます。「天ぷら」という言葉の由来にも、ポルトガル語の「テンペロ(調理する)」から来たという説などがありますが、はっきりしていません。
江戸時代、新しい大都市だった江戸では、屋台で立ったまま食べる外食が盛んになり、天ぷらもその一つでした。当時は串に刺して揚げ、大根おろしを添えて出していたそうです。江戸時代の後半には揚げ方や具が工夫されて高級料理にもなり、明治時代以降は料亭や天ぷら専門店が広がりました。
1923年の関東大震災で仕事を失った職人が各地に移り住んだことで、江戸前の天ぷらは全国に広まりました。今では、家庭のおかずやスーパーの惣菜から、高級な専門店の料理まで、さまざまな形で食べられています。
長崎天ぷらと各地のご当地天ぷら
長崎県には、約400年前から伝わるとされる「長崎天ぷら」があります。南蛮貿易で来たポルトガル人が食べていた、衣に味のついたフリッターが原型とされ、今も小麦粉の衣に砂糖や酒などを加えて揚げます。衣に味がついているので、天つゆにつけずにそのまま食べられ、冷めてもおいしいのが特徴です。長崎県の学校給食でも定番のメニューです。
食品メーカーの昭和産業は、各地のご当地天ぷらとして、静岡県で春に食べられるお茶の新芽の天ぷら、讃岐うどんの具として香川県で親しまれる甘く煮た金時豆の天ぷら、卵をたっぷり使った厚い衣が特徴の沖縄の天ぷらなどを紹介しています。
どう食べる?天つゆ、塩、天丼
揚げたての天ぷらは、かつおだしの「天つゆ」に大根おろしやしょうがを入れてつけるか、塩をふって食べます。レモンなど柑橘の汁をかける食べ方もあります。
天ぷらを甘辛いつゆでさっと煮て、ご飯にのせたものが「天丼」です。そばやうどんにのせる食べ方も古く、江戸時代後期のそば屋のメニューにはすでに「てんぷらそば」がありました。香川県のセルフ式うどん店では、好きな天ぷらを自分で選んでうどんにのせられます。
東京23区内の港区、中央区、文京区、渋谷区などには、魚介中心の昔ながらの江戸前天ぷらを出す店があります。揚げたてを次々に食べるのが江戸前の楽しみ方なので、出されたら熱いうちに食べましょう。1989年以降は自動フライヤーなどの普及で、天丼や天ぷらのチェーン店も全国に広がりました。
食事制限のある方へ
衣には小麦粉と卵が使われます。日本政府観光局(JNTO)は、野菜の天ぷらをベジタリアンの方も試せる料理として紹介していますが、天つゆにはかつおだし(魚)が使われるので注意が必要です。気になる方は、注文の前にお店で確認してください。
ヒント
- 天ぷらは揚げたてを楽しむ料理です。出されたら熱いうちに食べましょう。
- 天つゆと塩の両方が用意されていたら、具によって食べ比べてみましょう。
- 気軽に試すなら、天ぷらをご飯にのせた天丼や、天ぷらそば・天ぷらうどんがおすすめです。
- 長崎を訪れたら、つゆをつけずに食べる味つき衣の「長崎天ぷら」も試してみてください。
- だしを避けたい場合は、天つゆではなく塩で食べられるか聞いてみましょう。