祭り · 2月

西大寺会陽(はだか祭り)

真冬の夜、まわし姿の男たち約1万人が、寺の窓から投げ込まれる2本の木の棒を奪い合う。500年以上続く岡山の「はだか祭り」は、いま大きな転換点にあります。

Hundreds of men in white loincloths packed together in front of the main hall of Saidai-ji during the Eyo naked festival
Photo: KQuhen (新しいタブで開きます), CC BY-SA 4.0 (新しいタブで開きます), via Wikimedia Commons
開催地

岡山県

  • 岡山県岡山市東区の西大寺観音院(JR赤穂線・西大寺駅から徒歩約10分)

最近の開催

年日程来場者数備考
20262月21日—主催者発表で約1万人が裸で参加。宝木争奪戦の最中に参加者3人が意識不明となり、うち2人が死亡しました。主催団体は2027年の宝木争奪戦を行わない方向で調整しています(2026年9月末の報道)。
20252月15日—通常どおり、午後10時に宝木が投下されました。
20242月17日—新型コロナウイルスの流行で取りやめていた宝木争奪戦を、4年ぶりに実施しました。
20232月18日—宝木争奪戦は行わず、裸の男たちが本堂の大床でもみ合う「地押し」を3年ぶりに観客に公開。この年のみ観覧席は無料でした。

どんな祭り? いつ、どこで?

西大寺会陽(さいだいじえよう)は、岡山県岡山市東区の西大寺観音院(さいだいじかんのんいん、真言宗の寺)で行われる祭りで、「はだか祭り」の名で知られています。毎年2月の第3土曜日の夜、まわし(相撲の力士が締めるような腰布)を締めた裸の男たちが、本堂の「御福窓(ごふくまど)」から投げ込まれる2本の「宝木(しんぎ)」を奪い合います。

宝木の投下は午後10時です。2009年までは午前0時に投げ込まれていましたが、会陽500周年にあたる2010年から現在の時刻になりました。2026年の祭りは2月21日に行われ、主催者の発表では約1万人が参加しました。

室町時代から続く大規模な行事で、作法がよく受け継がれていることから、2016年3月2日に国の重要無形民俗文化財に指定されました。2024年6月には、北前船(江戸〜明治時代に日本海と瀬戸内海を行き来した商船)をテーマにした日本遺産の構成文化財にも加えられています。

お札の奪い合いから始まった500年の歴史

会陽のもとになったのは「修正会(しゅしょうえ)」という新年の祈りの行事です。奈良時代に東大寺の僧・実忠(じっちゅう)が始めたもので、西大寺には開山(寺を開いた僧)の安隆(あんりゅう)が伝え、旧暦の正月に14日間行われていたとされます。

寺の伝えによると、今の形になったのは1510年です。当時の住職・忠阿(ちゅうあ)が、祈りの最終日に、ありがたいお札を求めて押し寄せた参拝者の頭上にお札を投げたところ奪い合いになり、人々は身動きが取りやすいように裸になった、というのが始まりとされています。

宝木は香をたきしめた2本1対の木で、それぞれ「牛玉紙(ごおうし)」というお札の紙に包まれて投げ込まれます。寺では宝木を命の象徴と位置づけています。準備は約3週間前から始まり、宝木の材料を同じ岡山市東区の無量寿院という寺へ受け取りに行く「宝木取り」、それを削って仕上げる「宝木削り」を経て、14日間の祈りが続きます。

祭りの夜の流れ

当日は昼過ぎから、子どもたちが参加する「少年はだか祭り」が行われます。夕方からは、祭りの始まりを告げる「会陽太鼓」の演奏があり、打ち手は全員女性です。白装束の女性たちが境内の垢離取場(こりとりば、水で身を清める場所)で身を清め、境内を練り歩く「女性はだか」もあります。夜には「会陽冬花火」も上がります。

夜が更けると、まわし姿の男たちが「ワッショ、ワッショ」の掛け声とともに集まり、境内の守り神である牛玉所大権現(ごおうしょだいごんげん)にお参りしてから本堂へ向かいます。午後10時、照明が落とされた本堂の御福窓から宝木が投げ込まれると、大床(本堂の広い床)の上で激しい奪い合いが始まります。

宝木を手にしたまま仁王門(寺の正門)の外へ出た人が、その年の「福男」です。宝木を主催者に届けて本物と認められると、その年の「祝主(いわいぬし)」と呼ばれるスポンサー企業などに納められ、約1年間大切に祀られます。

2026年の事故と、これからの会陽

2026年2月21日の祭りでは、午後10時過ぎの宝木争奪戦のさなかに参加者3人が意識不明の状態で見つかり、そのうち2人が亡くなりました。岡山県警は、周囲からの圧力で押しつぶされたか、ほかの参加者の下敷きになった可能性を調べています。会陽ではこれ以前にも、1987年と2007年に参加者が亡くなる事故が起きています。

これを受けて、主催する西大寺会陽奉賛会(地元の企業や消防団の代表などでつくる団体)は2026年7月、弁護士などによる第三者の「在り方検討委員会」を設け、2028年以降の祭りについて検討を進めています。2026年9月29日の幹部会合では、安全対策が整っていないとして、2027年は宝木争奪戦を行わない方向でまとまったと報じられています。正式には役員会で決める予定で、祭りそのものをどう開くかは西大寺観音院と協議するとのことです。

宝木争奪戦は、新型コロナウイルスの流行中も取りやめられたことがあり、そのときは住職がくじで福男を選んだり、あらかじめ決めた代表者に宝木を手渡したりする形で行われました。訪れる前には、必ず最新の情報を確認してください。

見物するときの注意

境内には有料の観覧席(座席指定席と立見席)が設けられ、本堂の内側を見られる拝観券もあります。立見席は事前に売り切れることはまずなく、観覧者の多くは当日、観覧席の入口で購入しているそうです。会場は大変混み合うため、観覧席にはなるべく午後9時ごろまでに入るよう案内されています。

例年の案内では、午後7時30分以降は寺周辺の一部の道が一般の人は通れなくなり、午後8時以降は入場が制限されることがあります。境内では警察や消防、係員の指示に必ず従いましょう。女性や子ども、高齢者は早めに参拝すること、ベビーカーでの来場は控えることが求められています。

会場と周辺でのドローンの飛行は禁止、観覧席ではカメラの三脚も禁止です。雨の日は傘が周りの迷惑になるので、レインコートを着ましょう。宝木の投下の様子は、公式のYouTubeチャンネルでライブ配信されてきました。

ヒント

  • 2027年は宝木争奪戦を行わない方向と報じられています(2026年9月末時点)。日程や内容は、西大寺観音院や西大寺会陽奉賛会(岡山商工会議所西大寺支所)の発表を必ず確認してください。
  • 西大寺観音院へは、JR岡山駅から赤穂線で約18分の西大寺駅を降りて徒歩約10分です。交通規制があり駐車場も限られるので、電車やバスで行きましょう。
  • 観覧席にはなるべく午後9時ごろまでに入りましょう。午後8時以降は入場が制限されることがあります。
  • 雨の日は傘ではなくレインコートで。ドローンの飛行や、観覧席での三脚の使用は禁止です。
  • 裸で参加する場合は事前の申し込みが必要です。飲酒した人や入れ墨のある人は参加できず、眼鏡・アクセサリー・スマートフォンの持ち込みも禁止されています。

出典

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