牛たん焼き
仙台名物なのに、宮城県は牛タンの産地ではありません。戦後の1軒の焼き鳥屋から始まった、厚切りの牛タン焼きと定食文化の話です。
仙台の牛たん焼きとは?
牛たん焼きは、牛の舌(タン)を厚めに切って塩などで味をつけ、炭火で焼いた料理です。宮城県仙台市の名物で、宮城県の県産品サイトでは、笹かまぼこ、ずんだ餅(枝豆のあんをからめた餅)と並ぶ「仙台三大名物」の一つとして紹介されています。
焼肉店で出る薄切りの牛タンとは作り方が違います。仙台牛たん振興会によると、牛たん専門店では、皮をむき、切り分け、切れ込みを入れるところまですべて手作業で行います。手で塩を振って味をつけ、冷蔵庫で3〜4日熟成させてうま味を引き出してから、炭火で手早く焼き上げます。
1軒の焼き鳥屋から始まった
仙台の牛たん焼きは、第二次世界大戦が終わって間もないころに生まれました。山形県出身の料理人・佐野啓四郎さんが仙台市中心部の一番町で焼き鳥屋を開き、当時なじみの薄かった牛タンを日本人の口に合う料理にしようと工夫を重ねて、塩味の牛たん焼きを考えました。仙台牛たん振興会によると、「太助」という店名で本格的にメニューにしたのは1948年(昭和23年)ごろです。
昭和40年代(1965〜1974年)ごろからは、佐野さんの店で修業した職人たちが独立して専門店を開き、仙台の街に牛たん店が増えていきました。1982年に東北新幹線が開業すると、首都圏から出張や観光で訪れる人が増え、「仙台といえば牛たん」と全国に知られるようになりました。
麦飯とテールスープの「牛たん定食」
仙台では、牛たん焼きを定食で食べるのが一般的です。厚切りの牛たん焼きに、麦飯(麦を混ぜて炊いたご飯)、テールスープ(牛の尾でだしをとった、あっさりしたスープ)、南蛮味噌(ピリッと辛い味噌)を組み合わせるのが基本形で、店によってはとろろ(すりおろした山芋)も付きます。
味付けは、元祖とされる塩味のほか、味噌味やたれ味を出す店もあります。量は「何枚」「何切れ」で表すことが多く、店によって1人前の量や選べる量が違うので、メニューの表示を確認して注文しましょう。
牛タンは宮城産ではない?
意外なことに、宮城県が牛タンの産地というわけではありません。牛タンは牛1頭からわずか1kgほどしか取れない部位で、仙台の牛たん店はこれまで輸入された牛タンも多く使ってきました。
2001年に国内でBSE(牛海綿状脳症)が見つかると売り上げが大きく落ち込み、翌2002年に専門店が協力して仙台牛たん振興会が作られました。2003年にアメリカでBSEが発生した際には、アメリカやカナダなどからの牛タンの輸入が止まり、原料の値段が何倍にも跳ね上がって、廃業や転業を余儀なくされた店も少なくありませんでした。その後、世界的に牛タンの需要が高まって高級な部位になり、振興会は、牛たん焼きがかつての「庶民の味」から、観光客向けや特別な日のごちそうになりつつあると説明しています。
それでも仙台の牛たん焼きは、文化庁が地域の食文化を次の世代に伝えるために認定する「100年フード」の「未来の100年フード部門」に認定されています。
どこで、どう食べる?
本場は宮城県仙台市です。仙台市内には牛たん専門店が多く、仙台駅の周辺にも店があります。お土産用の味付け牛タンや、牛たんのシチュー、カレーなども多く売られています。
食事制限のある方へ:牛たん焼きは牛肉の料理で、定食のテールスープも牛の尾からだしをとっています。麦飯には大麦が入ります。牛肉を避けたい方や食材に制限のある方は、店で確認してください。
ヒント
- 仙台らしさを味わうなら、麦飯・テールスープ・南蛮味噌がそろった「牛たん定食」を。
- まずは元祖の塩味から。味噌味やたれ味を出す店もあるので、2軒目で食べ比べるのも楽しいです。
- 量は枚数や切れ数で選ぶ店が多いので、メニューの表示を確認してから注文しましょう。
- 南蛮味噌は辛いので、少しずつ牛タンにのせて試してみてください。
- 牛肉と牛のスープを使う料理です。食材に制限がある方は注文前に確認を。