日本の食べもの · 肉料理

ジンギスカン

真ん中が山のように盛り上がった鉄鍋で、羊肉と野菜を一緒に焼く北海道の郷土料理。モンゴルの英雄の名前がついた理由と、羊毛から始まった意外な歴史を紹介します。

Lamb, cabbage, bean sprouts, mushrooms and pumpkin grilling on a domed jingisukan pan
Photo: Totti (新しいタブで開きます), CC BY-SA 4.0 (新しいタブで開きます), via Wikimedia Commons
ゆかりの地域

北海道の郷土料理

主にこの地域で食べられていて、ほかの地域ではあまり見かけません。

  • 北海道北海道遺産に選ばれた郷土料理。滝川など道央内陸は「味付け」、札幌・月寒など沿岸部や都市部は「後付け」が主流

ジンギスカンとはどんな料理?

ジンギスカンは、羊の肉と野菜を専用の鉄鍋で焼いて食べる北海道の郷土料理です。鍋は中央が兜(かぶと)のように盛り上がり、表面に溝が刻まれています。盛り上がった中央で肉を焼き、まわりの低いところに野菜を置くと、肉から出た肉汁が溝を伝って流れ落ち、野菜に味がしみ込むしくみです。

使う羊肉は、生後1年未満の子羊の「ラム」と、生後2年以上の「マトン」の2種類です。ラムは羊特有のにおいが少なくやわらかく、マトンは少しクセがあるものの脂がのって味がしっかりしています。一緒に焼く野菜は、たまねぎ、もやし、ピーマン、かぼちゃなど、家庭や店によってさまざまです。

2004年には北海道の宝物を次の世代に伝える「北海道遺産」に選ばれ、2007年には農林水産省が主催した「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれました。

「味付け」と「後付け」:北海道の中でも食べ方が分かれる

ジンギスカンには大きく2つの食べ方があります。あらかじめ醤油ベースなどのタレに漬け込んだ肉を焼く「味付け」と、味のついていない肉を焼いてから別の皿のタレにつけて食べる「後付け」です。

農林水産省によると、内陸の滝川(たきかわ)市など道央の内陸部では「味付け」が、札幌や月寒(つきさむ:札幌市内の地区)など沿岸部や都市部では「後付け」が主流と言われています。もっとも札幌の観光案内では、どちらのタイプも店やメーカーによって楽しめると紹介されています。

焼き終わったあと、鍋の縁にたまったタレにうどんを入れて煮込み、締めにすることもあります。店によってはラーメンを入れるところもあります。

名前の由来と、羊毛から始まった歴史

ジンギスカンは漢字で「成吉思汗」と書き、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハンと同じ表記です。チンギス・ハンが戦いのときに兵士に羊肉と野菜を焼いて食べさせたことが名前の由来だと言われますが、これは言い伝えで、実際のモンゴルの料理とはかなり違うとされています。モンゴルの人の中には、英雄の名前が料理名に使われることを快く思わない人もいるそうです。

日本で羊が多く飼われるようになったのは、大正時代のことです。第一次世界大戦で羊毛の輸入が難しくなり、国の政策として毛をとるための羊の飼育が奨励されました。北海道でも羊の飼育が盛んになり、この頃から羊肉が食べられるようになったと言われています。第二次世界大戦後、輸入羊毛や化学繊維が広まって国産の羊毛の値段が下がると、北海道では羊を肉用に育てるようになり、羊肉をもっと食べてもらうための料理としてジンギスカンが根づいたとされています。

料理の発祥には諸説あります。昭和のはじめ、羊肉を食べる習慣のなかった日本人向けに、中国の羊の焼肉料理を参考にして考えられたという説や、大正時代に満州(中国東北部)へ渡った日本人が現地の羊肉料理を見たのがきっかけという説などです。一般の家庭まで広まったのは、戦後しばらくしてからだとされています。

北海道の暮らしの中のジンギスカン

北海道ではジンギスカンは特別なごちそうというより、普段の料理です。家庭にジンギスカン専用の鍋があることも多く、スーパーでは家庭用の羊肉やタレが売られています。札幌のホームセンターでは使い捨てのジンギスカン鍋も売られています。

春のお花見や夏のバーベキューなど、家族や友人が集まると屋外でジンギスカンを焼く「ジンギスカンパーティー」をすることもあります。4月29日は「よう(羊)・にく(肉)」の語呂合わせから「ジンギスカンの日」とされ、札幌市では毎年「北海道ジンギスカンフェスティバル」が開かれています。

北海道以外では、岩手県遠野市や長野県の一部などでもジンギスカンがよく食べられています。遠野市では、屋外で穴のあいた専用のバケツに燃料を入れて鍋の台にする「ジンギスカンバケツ」が使われています。

どこで、どう食べる?

ジンギスカンは今では全国で知られていますが、本場は北海道です。北海道内には有名なジンギスカン店が多く、観光客もたくさん訪れます。札幌には昔ながらの店から新しいスタイルの店までそろい、味付けジンギスカンの代表的な地域として知られる滝川市もあります。羊肉の多くはニュージーランドやオーストラリアから輸入されていますが、北海道産のサフォーク種(肉用の羊の品種)を出す店もあります。

焼き方の基本は、鍋全体に脂(または油)をなじませて焦げつきを防ぎ、中央の山に肉を、縁に野菜を置くことです。肉は焼きすぎると硬くなるので注意しましょう。後付けの場合は、焼けた肉をタレにつけて食べます。

食事制限のある方へ:ジンギスカンは羊肉の料理で、タレは醤油ベースのものが多く使われます。気になる材料がある場合は、お店で確認してください。

ヒント

  • メニューの「味付け」はタレに漬け込んだ肉、それ以外は焼いてからタレにつけて食べる肉です。どちらか分からないときはお店の人に聞きましょう。
  • 初めてで羊のにおいが気になる人は、クセの少ない「ラム」から試すのがおすすめです。
  • 肉は鍋の中央の山に、野菜は縁に置きます。肉は焼きすぎると硬くなるので、色が変わったら早めに食べましょう。
  • 最後に鍋の縁に残ったタレでうどんを煮込むと、締めの一品になります。
  • 北海道で春に訪れるなら、お花見とジンギスカンを一緒に楽しむ地元の習慣をのぞいてみるのもよいでしょう。

出典

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