味噌カツ
揚げたてのとんかつに、濃い茶色の甘辛い味噌だれ。名古屋の定番「なごやめし」の味の秘密は、ほぼ東海地方だけで作られている特別な味噌にあります。
愛知県・岐阜県・三重県の郷土料理
主にこの地域で食べられていて、ほかの地域ではあまり見かけません。
味噌カツとはどんな料理?
味噌カツは、豚肉に衣をつけて揚げたとんかつに、豆味噌(まめみそ)をベースにした甘辛いたれをかけた料理です。名古屋を中心とする地域の名物料理「なごやめし」の代表のひとつで、串に刺して揚げた串カツに味噌だれをつけたものも味噌カツに含まれます。
味噌をそのまま使うのではなく、ほかの調味料と合わせてたれを作るため、味は店ごとに違います。名古屋市の公式観光サイトによると、店のスタイルは大きく分けて、たれをカツの上からかける店と、たれを張った鍋にカツをくぐらせる店の2種類です。洋食店では、たれを別の小皿で出すところもあります。
主役は東海地方の「豆味噌」
味噌カツの味を決めているのは、豆味噌という種類の味噌です。豆味噌は大豆と塩、水だけを原料に、伝統的な方法で1年、長いものでは2〜3年かけて熟成させます。色が濃く、一般には「赤味噌」とも呼ばれます。岡崎市の「八丁味噌(はっちょうみそ)」が代表的な銘柄です。
農林水産省によると、高温多湿な東海地方の夏は味噌が酸っぱくなりやすいため、大豆に直接麹菌(こうじきん:味噌や醤油の発酵に使うカビの一種)をつける独自の作り方が発達したといいます。豆味噌は愛知・岐阜・三重の東海3県でほぼ作られ、食べられています。煮込んでも風味が落ちにくく、肉や揚げ物とよく合うことから、とんかつと組み合わせる料理が自然に生まれたと考えられています。
発祥はどこ?はっきりしない味噌カツの始まり
味噌カツがいつ、どこで生まれたのかを示す決定的な記録は見つかっていません。よく知られているのは、第二次世界大戦の後、名古屋の屋台で、客が串カツをどて煮(豚や牛のもつを豆味噌で煮込んだ料理)の鍋に浸して食べていたのが始まりという説ですが、これも言い伝えの域を出ません。
名古屋の外にも「発祥」とされる店があります。三重県津市の津市観光協会は、市内の洋食店で1965年に味噌カツが生まれたと紹介しています。岐阜市にも1957年創業で「元祖」を名乗る店があります。一方で名古屋にも、戦後すぐから味噌カツを出していたとされる店がいくつもあります。名古屋めしに詳しいライターの取材では、どの店も自分が唯一の発祥だとは主張しておらず、豆味噌を使う地域で、何人もの料理人がそれぞれ考えついた料理と見るのが自然だとしています。
どこで、どう食べる?
本場は愛知県の名古屋市とその周辺です。名古屋ではとんかつ専門店だけでなく、定食屋、喫茶店、居酒屋、総菜店でも味噌カツが食べられ、とんかつを出す店ならほぼどこでも「味噌」か「ソース」かを選べると言われます。居酒屋では味噌だれの串カツも定番です。
隣の岐阜県でも豆味噌の文化が共通しているため、味噌カツはごく一般的です。岐阜市の老舗の店主によると、その店ではソースで食べる客は1割にも満たないそうです。三重県津市の洋食店の味噌カツは、ブイヨンでのばしたさらっとしたソースのようなたれで、名古屋のこってりしたたれとはまた違う味わいです。
とんかつのほか、ご飯の上にのせた「味噌カツ丼」もよく見かけます。食事制限のある方へ:味噌カツは豚肉料理で、衣には小麦粉が使われます。たれにかつおのだしを加える店もあるので、気になる場合は注文前に確認してください。
ヒント
- 名古屋のとんかつ店では、注文時に「味噌」か「ソース」かを聞かれることがあります。せっかくなら味噌を選んでみましょう。
- たれをかけるタイプ、鍋にくぐらせるタイプ、別皿で出すタイプと、店ごとに出し方が違います。何軒か食べ比べると違いがよくわかります。
- 居酒屋では、一本ずつ頼める味噌だれの串カツが手軽です。
- 名古屋の豆味噌の味が気に入ったら、味噌煮込みうどんやどて煮など、同じ味噌を使う「なごやめし」も試してみてください。
- 豚肉や魚のだしを避けたい場合は、注文前に材料を確認してください。