きりたんぽ鍋
炊いたご飯をつぶして杉の串に巻き、炭火で焼いてから鍋へ。秋田の新米の季節に欠かせない、ご飯が主役の鍋料理を紹介します。
きりたんぽ鍋とはどんな料理?
きりたんぽ鍋は、秋田県北部の郷土料理です。炊いたご飯をすりつぶして串に巻きつけ、炭火で焼いたものを「たんぽ」と呼びます。これを食べやすい長さに切り、鶏ガラでとったスープに鶏肉、ゴボウ、長ネギ、セリ(香りの強い日本の野草)、まいたけなどと一緒に入れて煮込みます。味付けは醤油が基本です。
名前の由来は、串に刺して焼いたご飯の形が、水辺に生える植物「ガマ」の穂に似ていたことだとされます。短い穂を意味する「短穂(たんぽ)」が呼び名になり、それを鍋に入る長さに「切った」ものが「きりたんぽ」です。
山で働く人たちの食べ物から生まれた
発祥の地とされるのは、秋田県北部の大館(おおだて)市と鹿角(かづの)市の一帯です。言い伝えでは、炭焼きや秋田杉の伐採のために山にこもって働いた人たちが、残ったご飯をつぶして棒に刺して焼き、鳥の鍋に入れて食べたのが始まりとされています。
大館市は別の説として、マタギ(東北地方の伝統的な狩人)が食べ残したおにぎりを、獲った鳥や獣の鍋に入れたことから生まれたという話も紹介しています。どちらも記録で確かめられたものではなく、言い伝えとして受け継がれている話です。
味の決め手は比内地鶏
きりたんぽ鍋に欠かせないのが鶏です。もともと使われていた秋田の「比内鶏(ひないどり)」は国の天然記念物に指定され、食べられなくなった時期がありました。そこで当時の比内町の町長の呼びかけで、食用の「比内地鶏」が生まれ、きりたんぽ鍋は再び家庭の味として復活しました。
大館市が紹介する作り方では、比内地鶏のガラを水から煮込んでスープをとり、鶏肉とゴボウ、まいたけを煮てから醤油で味をつけます。化学調味料は使わず、好みで日本酒や塩を加えます。たんぽは最後に入れて2〜3分煮るだけにし、長ネギ、最後にセリを入れて仕上げます。
新米の季節の「ごちそう」
きりたんぽ鍋は、新米が収穫される秋に作られることが多い料理です。秋田県北部では、米の収穫が終わると、その苦労をねぎらってきりたんぽ鍋を囲む習慣があります。大館市では新米のたんぽと脂ののった比内地鶏を味わう「たんぽ会」があちこちで開かれ、冠婚葬祭や来客のもてなしにも出される料理です。
毎年、大館市では「本場大館きりたんぽまつり」(大館市によると新米の季節の10月に開催)、鹿角市では「きりたんぽ発祥まつり」が開かれ、きりたんぽ鍋を味わえるほか、たんぽ作りを体験することもできます。
「みそつけたんぽ」との違いと、食べるときの注意
秋田県内の観光地では、焼いたたんぽに砂糖を加えた甘い味噌を塗った「みそつけたんぽ」をよく見かけます。そのため県外の人は「たんぽ」と聞くと串に刺したものを想像しがちですが、大館市によると、秋田で「たんぽ」と言えば、ふつうはきりたんぽ鍋のことを指すそうです。
食事制限のある方へ:たんぽ自体はご飯ですが、スープは鶏ガラでとり、鶏肉も入ります。味付けには醤油を使います。ベジタリアンの方や特定の食材を避けたい方は、店で材料を確認してください。
ヒント
- 本場の雰囲気を味わうなら、新米が出回る秋に秋田県北部(大館市・鹿角市)を訪ねるのがおすすめです。
- 大館市の「本場大館きりたんぽまつり」や鹿角市の「きりたんぽ発祥まつり」では、食べるだけでなくたんぽ作りを体験できます。日程は各市の発表を確認してください。
- 串に刺した甘い味噌味の「みそつけたんぽ」は別の食べ物です。鍋を食べたいときは「きりたんぽ鍋」と頼みましょう。
- お土産用の市販のたんぽは、大館市によると1人前1.5〜2本ほどが目安です。
- 鶏ガラのスープと鶏肉を使う料理なので、食材を避けたい場合は注文前に確認してください。