東北 地方

秋田県

秋田には、ブナの森、冬の深い雪、米どころの料理、そして山と海に育まれた伝統が集まっています。

Snowy winter view across Lake Tazawa from its eastern shore
Photo: Brian Dell, CC0, via Wikimedia Commons

ブナの森から日本海へ

秋田は本州北部の日本海側に位置し、稲作の平野が山々や森、長い海岸線へと移り変わっていきます。北西部では、白神山地が県境を越えて青森県へと広がっています。その広大なブナ林には、ユネスコの世界自然遺産に登録された中心部が含まれています。ここは単なる背景以上のものとして向き合いたい風景です。森の小道、山の集落、地元の木工の伝統は、すべて同じ物語の一部なのです。

内陸にある田沢湖は日本で最も深い湖です。湖岸を山々が囲み、その水は冬でも凍りません。さらに北では、十和田湖の秋田側が、はるかに大きなカルデラ湖で青森と接しています。こうした場所の間の距離も、秋田を変化に富んだものに感じさせる要素の一つです。旅は、開けた湖岸から閉ざされた森へ、そして再び田畑を抜けて海へと移っていくかもしれません。

武家屋敷の通りと木の手仕事

角館は17世紀初めに城下町として発展しました。城はもうありませんが、武家屋敷の地区には今も古い屋敷や門、広い通りが残っており、歩きながらその歴史を読み取りやすくなっています。春にはしだれ桜がその通りをやわらかく彩ります。屋敷から屋敷へと急ぐのではなく、格式ある門構えと、その周りの日常の町並みとの対比に目を留める時間をとりましょう。

秋田の工芸は、その過去に迫るもう一つの入口です。角館は、山桜の樹皮を磨き上げた細工(樺細工)で知られ、茶筒などの品に仕立てられています。北部の大館では、地域の森から杉の木工(曲げわっぱ)が生まれ、今では弁当箱やお盆など身近な家庭用品もつくられています。どちらの伝統も単なるお土産のテーマではなく、身近にある素材を実用的に生かしたものです。この地方の山の遺産には、森深い内陸部と結びついた伝統的な狩猟集団、マタギも含まれています。

食卓には米、漬物には煙

米は秋田の料理の中心です。きりたんぽは、炊いたご飯をつぶして串に巻きつけ、焼いたものです。発酵させた大豆のペーストである味噌を塗ったものや、切ってきりたんぽ鍋にしたものに出会えるでしょう。きりたんぽ鍋は鶏肉、きのこ、野菜を入れてみんなで囲む鍋料理です。比内地鶏は、そのスープに使われる珍重される地元の食材です。寒くなるとこの料理の魅力はすぐにわかりますが、飲食店では冬以外にも出しています。

食感の違いを楽しみたいなら、湯沢ゆかりの、なめらかでコシのある麺、稲庭うどんを試してみてください。食事と一緒に、いぶりがっこに出会うかもしれません。大根を囲炉裏の上でいぶしてから米ぬかで漬けたものです。この製法は、屋外で大根を干すのが難しい雪深い冬に対応して生まれました。秋田には独自の海の幸もあります。冷たい海の魚であるハタハタは、焼き物や鍋料理で登場します。これらの食べ物を合わせると、この県の田畑、森、海岸、そして屋内で過ごす長い季節について何かが見えてきます。

提灯と雪が刻む一年

春には角館にしだれ桜が咲き、夏には屋外での集まりに注目が移ります。秋田市の竿燈まつりでは、演者たちが提灯を吊るした長い竹竿を、手のひら、肩、腰、額の上でバランスをとって支えます。竿は稲穂に似ており、豊作を祈る祭りにふさわしい姿です。秋には八幡平などの山間部が紅葉し、収穫後には自然とご飯ものが食べたくなります。

冬には冬ならではの共同体の儀礼があります。男鹿半島では、地域ごとに異なるなまはげの面をかぶった人々が大晦日に家々を訪れ、中にいる家族に呼びかけます。旅行者は家庭訪問に加わるよりも、地元の展示を通じてこの風習について知ることのほうが多いでしょう。横手では、冬の祭りのために、水神を祀る祭壇を備えた雪室「かまくら」をつくります。これらの行事は雰囲気がまったく異なりますが、どちらも秋田の地域社会が寒さをみんなで分かち合う機会に変えていることを示しています。

アクセスと、ゆっくりしたルート

秋田新幹線の「こまち」は東京と秋田市を結び、角館にも停車するので、鉄道で旅を始めるのが手軽です。東京の羽田空港からは秋田空港へ、北部方面には大館能代空港への便があります。秋田市は交通の拠点として便利で、角館の歴史ある通りは歩いて快適に散策できます。

これらの拠点から先は、一本の列車ですべての見どころに行けると思い込まず、区間ごとに計画を立てましょう。在来線やバスが一部の町や湖畔エリアを結んでおり、海岸、森、山に広がる旅なら車があると柔軟に動けます。移動そのものを旅の一部にしたいなら、秋田内陸線が角館と鷹巣の間の内陸部を走り、田畑や山あいの谷を通り抜けます。移り変わる車窓の景色は、秋田を巡ることがこの県の成り立ちを知る方法でもあることを、やさしく思い出させてくれます。

出典