沖縄そば
「そば」なのにそば粉を1グラムも使わない、沖縄の県民食。その名前を守るために、地元の製麺業者が国と交渉した歴史があります。
沖縄県の郷土料理
主にこの地域で食べられていて、ほかの地域ではあまり見かけません。
- 沖縄県県内全域で日常的に食べられる県民食。本島北部は平麺、那覇周辺は縮れ麺、宮古・八重山には独自のそばがある
沖縄そばとはどんな料理?
沖縄そばは、沖縄県で毎日のように食べられている温かい麺料理です。名前に「そば」とありますが、日本本土のそば(そば粉で作る灰色の麺)とはまったく別物で、麺は小麦粉にかん水(アルカリ性の水)を加えて作ります。作り方の上では中華麺、つまりラーメンの麺の仲間に分類されます。麺は太めでやや黄色く、しっかりした歯ごたえがあります。
スープは豚骨とかつお節でとっただしが基本で、豚の濃厚さとかつおの香りをあわせ持っています。定番の具は、皮付きの豚バラ肉を砂糖と醤油で甘辛く煮た「三枚肉(さんまいにく)」、沖縄独特の揚げたかまぼこ、ねぎ、紅しょうがです。沖縄県内では単に「そば」、沖縄の言葉で「すば」とも呼ばれます。
沖縄生麺協同組合によると、沖縄県内では1日におよそ19万〜20万食の沖縄そばが食べられています。家庭でも市販の麺を使って作られるほか、専門店や食堂で日常的に食べられる、まさに県民食です。
宮廷料理から戦後の庶民の味へ
沖縄生麺協同組合は、1534年に琉球(りゅうきゅう:かつて沖縄にあった王国)の王の法要で「粉湯(中国語で汁そばの意味)」が献上されたという中国側の記録を、沖縄そばの原形として紹介しています。ただし同組合自身も「確かな記録はない」としており、麺料理が中国から伝わった時期ははっきりしていません。
沖縄県公文書館によると、明治時代の中頃に那覇で中国人が営む店で出されていた麺料理が始まりとも言われます。当時は「すば」や「支那すば」と呼ばれ、「沖縄そば」という呼び名が一般的になったのは第二次世界大戦の後です。戦後は庶民の食べ物として広く普及し、各地域でさまざまな沖縄そばが作られるようになりました。
「そば」と名乗れなくなりかけた事件
沖縄が日本に復帰して4年後の1976年、公正取引委員会(国の機関)は、そば粉を3割以上使っていない麺を「そば」と表示することはできないと指摘しました。このままでは、県民に親しまれてきた名前を使えなくなるところでした。
沖縄生麺協同組合は、名前と食文化を守るために国との交渉を重ねました。その結果、1978年10月17日、麺の表示ルールの中で「本場沖縄そば」という名称が正式に認められました。組合はこの日を記念して、1997年から毎年10月17日を「沖縄そばの日」としています。
「本場沖縄そば」と表示するには、沖縄県内で製造すること、切った麺をゆでる前に必ず手もみすること、ゆでた後に油をまぶすことなど、原料から製法まで細かな条件をすべて満たす必要があります。
地域で変わる麺と、いろいろな具
沖縄そばの麺は地域によって形が違います。名護市など沖縄本島北部では帯のような平たい麺、那覇を中心とする南部では縮れた中くらいの太さの麺、石垣島などの離島では丸い細めの麺が好まれるとされています。農林水産省も、地域ごとに特色のあるそばとして宮古島の「宮古そば」や八重山諸島の「八重山そば」を挙げています。
具のバリエーションも豊富です。代表的なのは、豚の骨付きあばら肉(スペアリブ)を煮てのせた「ソーキそば」と、やわらかい軟骨付きの肉を使う「軟骨ソーキそば」です。ほかにも、豚のもつを使った「中味(なかみ)そば」や「野菜そば」などがあり、最近は変わり種のメニューを出す店もあります。
どこで、どう食べる?
本場は沖縄県で、那覇などの街なかから本島北部、宮古島や石垣島などの離島まで、県内全域の専門店や食堂で食べられます。お土産用の麺とスープのセットも売られているので、旅行の後に家で作ることもできます。
多くの店のテーブルには、島唐辛子(沖縄の小さく辛い唐辛子)を泡盛(あわもり:沖縄の蒸留酒)に漬けた調味料「コーレーグース」が置かれています。数滴かけると味が引き締まりますが、かなり辛いので最初は少しずつ試してください。
食事制限のある方へ:スープは豚骨とかつお節のだしが基本で、具にも豚肉やかまぼこ(魚のすり身)が使われます。麺は小麦粉製です。豚肉や魚を避けたい方は、注文の前にお店で確認してください。
ヒント
- 迷ったら、三枚肉がのった基本の「沖縄そば」か、骨付き肉がのった「ソーキそば」を選びましょう。
- 沖縄本島の北部と南部、離島では麺の形が違います。旅行中にいくつかの地域で食べ比べると違いがよくわかります。
- テーブルのコーレーグースはとても辛いので、一度に入れすぎず数滴ずつ加えてください。
- 10月17日は「沖縄そばの日」。この時期に沖縄を訪れるなら覚えておくと話のきっかけになります。
- 豚肉や魚のだしを避けたい場合は、注文前に材料を確認してください。