日本の食べもの · 魚介

寿司

酢飯に魚をのせた握りずしは、江戸の屋台で生まれた手軽な食べ物でした。大阪の箱寿司、富山のます寿司まで、すしの本当の幅広さを紹介します。

A wooden tray of assorted nigiri sushi and a hand roll, with pickled ginger and a dish of soy sauce
Photo: Nesnad, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons
ゆかりの地域

全国で食べられている料理

本場として知られるのは 東京都・大阪府・富山県・奈良県・滋賀県。

  • 東京都握りずしが広まった江戸の町。赤酢の酢飯とひと手間かけたネタの「江戸前寿司」
  • 大阪府木の型で押す箱寿司やバッテラの本場。回転寿司も東大阪市で生まれた
  • 富山県笹を敷いた丸いわっぱにマスと酢飯を詰めて押す「ます寿司」
  • 奈良県五條市・吉野地域に伝わる、サバの押しずしを柿の葉で包んだ「柿の葉寿司」
  • 滋賀県琵琶湖のフナを米と発酵させる古い形のすし「ふなずし」

すしは「生の魚」ではない?

海外では「すし=生の魚」と思われがちですが、日本政府観光局(JNTO)は、すしの中心はあくまで少し甘みのある酢飯(シャリ)だと説明しています。その上にのせたり巻き込んだりする具を「ネタ」と呼び、魚介だけでなく、卵や野菜、火を通したものも使われます。ご飯なしで生の魚を切って並べた「刺身」は、すし店で出てきてもすしではありません。

形もさまざまです。手で握った酢飯にネタをのせる「握りずし」、海苔で巻いた「巻きずし」、円すい形に手で巻く「手巻きずし」、器のご飯の上にネタを散らす「ちらしずし」、甘く煮た油揚げに酢飯を詰めた「いなりずし」、木の型で押し固める「押しずし」などがあります。

保存食から江戸のファストフードへ

すしの始まりは、塩をした魚を米と一緒に漬けて発酵させる「なれずし」です。農林水産省によると、平安時代には保存食として食べられていました。JNTOは、この方法は稲作とともに日本に伝わったとされ、室町時代ごろまでは発酵に使った米は捨てていたと紹介しています。

江戸時代になると、なれずしから発酵を待たない「早ずし」、押しずし、そして握りずしが生まれました。江戸後期には、町の人が屋台で気軽に握りずしを食べられるようになります。当時の握りは今の3倍ほどのご飯を使い、小腹を満たすためのものでした。店を構えてもカウンターで握って出すスタイルは、屋台時代の名残です。

「江戸前寿司」では、赤酢(酒かすから作る酢)で味付けした酢飯に、酢で締めたコハダやサバ、煮たアナゴ、蒸したエビ、卵焼きなど、ひと手間かけたネタを合わせます。醤油に漬ける「ヅケ」や、昆布で挟んで味を移す「昆布締め」もその技です。

大阪の箱寿司、富山のます寿司:地域のすし

大阪では、握りではなく、四角い木の型に酢飯と具を詰めて押す「箱寿司」が代表格です。中でも、酢で締めたサバに薄い白板昆布を重ねた押しずしを「バッテラ」と呼びます。農林水産省によると、明治24年(1891年)に大阪・南船場の店が考案し、当初はコノシロという魚で作っていました。小舟のような形から、ポルトガル語で小舟を意味する名前がついたといわれます。醤油をつけずに食べられるので、持ち帰りや手土産に向いています。

富山県の「ます寿司」は、丸い木の器(わっぱ)に笹の葉を敷き、塩漬けしたマスと酢飯を重ねて押したものです。大正時代に駅弁として売り出されたことで全国に知られるようになりました。奈良県の五條市・吉野地域には、塩で締めたサバと酢飯を柿の葉で包んだ「柿の葉寿司」が伝わり、夏祭りのごちそうとして作られてきました。

滋賀県の「ふなずし」は、琵琶湖でとれる子持ちのニゴロブナを米と漬けて発酵させた、古い形のなれずしです。発酵で骨までやわらかくなり、1998年には滋賀県の無形民俗文化財「滋賀の食文化財」に選ばれています。

回転寿司からカウンターの「お任せ」まで

回転寿司は大阪で生まれました。大阪観光局によると、東大阪市・布施で立ち食いずし店を営んでいた人が、ビール工場のベルトコンベヤーを見て思いつき、1958年に第1号店を開きました。1970年の大阪万博への出展で知られるようになり、すしを日常の食べ物に変えるきっかけになりました。

回転寿司では、流れてくる皿を自由に取ってかまいませんが、一度取った皿をレーンに戻してはいけません。目の前に職人がいる席なら、直接注文することもできます。緑茶はセルフサービスのことが多いです。

高級店では、ネタ選びを職人に任せる「お任せ」が一般的です。席の少ない人気店も多く、当日に予約なしで入るのは難しいため、旅行の計画段階で予約を確認しましょう。今ではスーパーやデパートの地下食品売り場、コンビニでもすしが買えます。

食べ方のマナーと食事制限

醤油はネタの側につけ、シャリ(ご飯)を醤油に浸さないようにします。ご飯が醤油を吸いすぎて味が強くなり、形も崩れやすくなるためです。箸でも手でも食べてかまいません。添えられたガリ(甘酢漬けのショウガ)は、次のすしの前に口の中をさっぱりさせるためのもので、ネタにのせるものではありません。

一般的な箸のマナーとして、箸から箸へ食べ物を渡すことと、ご飯に箸を突き立てることは避けましょう。

食事制限のある方へ:多くのすしは生の魚介を使います。JNTOは、キュウリの「かっぱ巻き」、たくあんの「たくあん巻き」、梅干しとシソの「梅しそ巻き」、いなりずしなどを、野菜中心のすしとして紹介しています。

ヒント

  • 醤油はシャリではなくネタの側に少しだけつけましょう。
  • 回転寿司では、取った皿をレーンに戻さないのがルールです。
  • 人気のすし店で「お任せ」を楽しみたいなら、旅行前に予約できるか確認しておきましょう。
  • 富山のます寿司や奈良の柿の葉寿司は、駅弁やおみやげとしても売られています。電車の旅のお供にどうぞ。
  • 生魚が苦手な方は、かっぱ巻きやいなりずし、卵焼きのすしなどから試してみてください。

出典

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