芋煮
秋の週末、山形の河原は大鍋を囲む人でいっぱいになります。里芋と牛肉の鍋「芋煮」を野外で楽しむ「芋煮会」は、お花見と並ぶ東北の季節の行事です。
山形県・宮城県の郷土料理
主にこの地域で食べられていて、ほかの地域ではあまり見かけません。
芋煮とはどんな料理?
芋煮(いもに)は、里芋(さといも:ねっとりした食感の小さな芋)を主役にした鍋料理で、山形県の代表的な郷土料理です。山形県の内陸部では、里芋、牛肉、こんにゃく、ねぎを醤油と砂糖で煮た甘辛い味が基本で、きのこやささがきごぼう(細く削ったごぼう)を入れることもあります。
芋煮は里芋がとれる秋から冬によく食べられます。家庭で作るのはもちろん、この時期になると旅館や飲食店でも出され、学校給食の献立にもなります。
河原で鍋を囲む「芋煮会」
山形の秋を象徴するのが「芋煮会(いもにかい)」です。家族や友人、職場の仲間などが川の河原や公園に鍋と材料を持ち込み、その場で芋煮を作って食べます。週末になると県内各地の河川敷がたくさんのグループでにぎわい、山形県では新年会や忘年会と並ぶ年中行事のひとつになっています。運動会や地域の行事の後に、野外で芋煮を作ることもあります。
シーズンになると、スーパーやコンビニに芋煮用の材料が並び、大鍋・薪・ござ(敷物)をセットにしたレンタルも当たり前に利用されています。宮城県など東北地方のほかの地域でも、秋に野外で里芋の鍋を囲む芋煮会が盛んです。
船頭たちの退屈しのぎから始まった?
芋煮の始まりは1600年代半ばごろとも言われ、山形県の中山町長崎にその言い伝えが残っています。当時の長崎は、日本海側の酒田から最上川(もがみがわ)をさかのぼる船の終点で、荷物の積み替えが行われる場所でした。船の到着を知らせる手段がなかったため、船頭たちは荷物の受け取り手が来るまで何日も待たされることがあり、退屈しのぎに河原で鍋を囲んだといいます。
近くの集落でとれた里芋と、船の積み荷だった棒鱈(ぼうだら:干したタラ)を、川岸の松の枝に鍋を掛けて煮たのがルーツとされ、その場所には今も「鍋掛松(なべかけまつ)」が立っています。ただし、これは言い伝えとして紹介されているものです。芋煮に牛肉が使われるようになったのは、昭和の初めごろからと言われています。
地域で変わる味と具
芋煮は地域や家庭によって味や具が違うのも面白いところです。山形県内でもっとも違いが大きいのは日本海側の庄内(しょうない)地域で、牛肉の代わりに豚肉を使い、厚揚げなども入れた味噌味が定番です。養豚が盛んな地域なので、豚肉と、それに合う味噌の味が定着したのではないかと言われています。
内陸部は牛肉の醤油味が基本ですが、最上(もがみ)地域では山菜やきのこを入れ、置賜(おきたま)地域では大きめに切った木綿豆腐を入れたり、隠し味に味噌を使ったりするところもあります。隣の宮城県の仙台周辺では、豚肉と里芋を地元の仙台味噌で味付けした「仙台風芋煮」が作られます。
具が少なくなった鍋にうどんを入れて「締め」(最後の一品)にする食べ方も定着していて、最近はカレールウを加えてカレーうどんにする人もいます。
どこで食べる?直径6.5メートルの大鍋も
本場は山形県です。秋には県内の旅館や飲食店で芋煮が出され、スーパーなどで材料もそろうので、旅行者でも味わう機会があります。
毎年秋には山形市で「日本一の芋煮会フェスティバル」が開かれます(2026年は9月20日に第38回を開催)。1989年に始まったイベントで、直径6.5メートルの大鍋「鍋太郎」で、3万食分を超える芋煮を一度に作ります。工事現場で使う重機(ショベルカー)を調理と盛り付けに使う光景が名物です。会場の近くには駐車場がないため、主催者は指定駐車場からのシャトルバスの利用を呼びかけています。
食事制限のある方へ:山形内陸の芋煮には牛肉、庄内や仙台の芋煮には豚肉が使われ、味付けは醤油や味噌です。肉を避けたい方は、芋煮会やお店で使っている材料を確認してください。
ヒント
- 山形で芋煮を食べるなら、里芋がとれる秋が旬です。河川敷で芋煮会をしているグループを見かけることもあります。
- 内陸の牛肉・醤油味と、庄内や仙台の豚肉・味噌味は別物と言ってよいほど違います。食べ比べると地域の違いがよくわかります。
- 鍋の具が少なくなったら、うどんやカレールウを入れる「締め」も試してみてください。
- 日本一の芋煮会フェスティバルに行く場合は、会場近くに駐車場がないので公式サイトで交通手段を確認しましょう。
- 牛肉や豚肉を避けたい場合は、材料を事前に確認してください。